批評 水谷川優子チェロ・リサイタル 2005年11月10日 浜離宮ホール

 結城亨氏 『音楽の友』(2006年1月号)より転載

 


「水谷川(みやがわ)の演奏に接したのはこれが初めてだが、また若手の優秀なチェリストが聴けた喜びは大きい。92年ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院を首席卒業、欧米で活躍していたが、やっとここ数年日本でも活動を広めてきた。プログラムが一風変わっていて、前半がブラームスの「ソナタ第1番」と歌曲3曲、後半がラフマニノフの「ソナタ」と3つの歌曲で、歌曲はどれもチェロへのトランスクリプションである。

 彼女の魅力は豊麗な美音や見事な運弓運指から生み出される朗々たるカンタービレで、それを聴いてなぜ彼女が歌曲のチェロ版を好むかが分かったような気がした。それは水谷川が単に歌の旋律を安易に表面美しく弾くのではなく、きちんと歌詩の意味を問いながら弾くので演奏に強い共感がこもり、深いニュアンスにも富むからだ。そしてその姿勢はソナタや協奏曲など大曲を演奏する場合の土台となり、血となり肉となる。そしてそのことは、ここでの2つの「ソナタ」にはっきり証明されていたのである。アルバート・ロトの老練なピアノもよかった。」